Facing a task unfinished ーまだ終わっていない1つの使命に向かってー

語り伝えよう 山を越え 谷越え。 伝え続けよう 主は救いのために来られた!

カエルのお城

夏になり、蝉の鳴き声が響き渡る。

 

田んぼの用水路には、グッピーのような小さい魚たちが群れをなして泳いでいる。

 

赤いザリガニがハサミをぼくに向けてくる。

 

ぼくが一歩近づく度に、数十匹の大小様々な大きさのカエルが一斉に飛び跳ねる。

 

みんなから遅れをとって、まだオタマジャクシのままなのもいる。

 

小さな魚を食べているのか分からないけれど、3羽のサギがいつも田んぼに立っている。まだ遠いのに、ぼくを見つけると一気に飛び立って遠くへ離れていく。何だか少し寂しくもなる。

 

けれど、サギがいたところには、やっぱり他の生き物たちがわんさか集まっている。

 

カメもすぐに水の深みへと逃げていく。地上ではのろまでも、水の中では結構素早い。

 

だから、地上でぼくに見つけられたとき、もう逃げられないと観念したような顔つきに変わる気がする。

 

ぼくは、存分に亀の逃避行を眺めて楽しむ。

 

広い田んぼには、沢山の用水路があって、みんながみんな自分の好きな場所を見つけて暮らしているのだと思っていた。

 

けれど、今日、ぼくは居城を見つけてしまった。

 

ここら一帯の田んぼを治めている領主とその家臣たちが集まっている場所に偶然出くわしてしまった。

 

ぼくは一瞬目を疑った。

 

ぼくが近づくと、何か大きなものが複数、水の深みに飛び込んでいくのが見えた。

 

音は、ぼちゃんっ、ではなく、ぼちゃん、だった。

 

複数だから、ぼちゃぼぼちゃ、ぼぼちゃ、という感じだった。

 

それらの招待を確かめたくて、15分時間をおいてから、今度はそーっと近づいてみた。

 

すると、いた。

 

大きめの亀、その亀の上に乗っている小さめの亀、その隣に別の亀、

 

そして、全長10cmほどの巨大カエル。

 

まず、家臣である亀たちが領主を置いて逃げた。小さな亀を背負いながら、水にダイブしていった。

 

根性のない家臣を持つ領主も可哀想だ。

 

残された領主である巨大カエルは、ぼくをぎろりとしばらく見つめた後、大きくジャンプして、ドボンっと水に飛び込んだ。

 

時間がとまったような感覚だった。

 

さすがは領主。この田んぼの覇者。大物の香りを醸し出している。

 

静かな興奮を覚えながら、ぼくはその場を後にした。

 

そして、夕方になってから居城を尋ねると、皆帰ってきていた。

 

けれど、ぼくを見つけると、また逃げた。

 

一気に緊張がほとばしる。彼らの防衛本能は凄まじい。

 

けれど、ぼくは見逃さなかった。

 

そこに、もう一匹新しい巨大カエルがいたのを。

 

彼には、奥さんがいたんだ。

 

でも、彼は奥さんをおいて一足先に逃げていたような......

 

 

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自分より他者を愛することは、思うほど簡単じゃないと思う。

人は臆病だし、有言不実行だし、自己中心だ。

 

勇気があって、有言実行で、他者中心に生きてますって言える人もいるかもしれない。けれど、想像を越えた事態に直面したとき、無力さを痛感する。

 

「逃げろ、逃げろ」。心がひとりでに叫び出す。

 

ぼくは、不名誉、恥、蔑み、憎悪、嫌悪、拒否、そして死を経験したくない。

強がって吠えるけど、本当は恐くて足が震えているチワワのようだ。

 

安全な場所など、この世界にはどこにもない。外から、内から、突如として襲ってくる。守ってくれるものはない。いざとなったら、ぼくを見捨てて逃げていく。

 

「あなたを見捨てない」なんて軽々しく言えない。

  あなたのために、いのちを捨てる覚悟があったとしても、実際の場面で、そのとおりに動けるかは別の問題だろう。

 

本当にいのちを捨てて初めて、愛は真実だと言える。