蝉
蝉(せみ)が蛹(さなぎ)からやっと出て来れたのに、左の羽根の先端が抜け殻にくっついて離れないため、上手く歩けない。
まっすぐ歩いて、自由に羽ばたくためには、古い殻をすべて捨て切らなくてはならない。
この蝉はもがいては止まり、もがいては止まりを繰り返し、やがて動かなくなってしまった。
私は助けを試みた。
殻を切り離すことはできた。けれど、いびつに歪んだ羽根を治すことはできなかった。
自由に飛び立つためには、古い殻を捨てるだけでなく、新しい羽根を手に入れることが必要だった。
戻る場所もなく、進む未来も見えない者たちが、もがきぶつかり合いながら光を求めている。彼らは、頑張っていないんじゃない。もう、すでに十分過ぎるほど頑張っている。そして、心は傷ついている。
新しい羽根をください。
光で照らしてください。
自由を与えてください。
いのちに生かしてください。